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Dreams Come True - Cant

毎週書くほどネタがないので少々真面目なディスクレビューでも始めてみようかと思います。

何故一発目がこれかというと,特に理由はない。強いて言えば最近ハマってるから。
CantはGrizzly Bearの中心人物であるChris Taylorのソロプロジェクトである。
…というよりGrizzly Bear自体最初はソロプロジェクトなわけで,Chris Taylorがソロを始めると聞いて真っ先に思い出したのがGrizzly Bearの1stだった。怖いほどの内省性と美しいメロディ…一気に肉体性を帯びた3rdでも根底には流れているが,あのような音楽をもう一度始めたくなったのかな…と勝手に思い,届いたCDをプレーヤーに入れた。
まず第一印象として暗い。そして美しい。と,ここまでは上の1stの感想と同じだが,ビートが明らかに違った。ダブステップに影響を受けたエレクトロニックなビートが,一気にこの作品にベッドルームにはない力強さを与えているのだ。
もちろんChrisが歌うあの驚くほど美麗なメロディはここでも遺憾なく発揮されているが,Grizzly Bearでは森の奥から聞こえてくるような神秘的なあの声が,ここではまるでディアンジェロのように色気のあるヴォーカルとして屹立している(なにせコーラスはほとんどないのだ)。
音も一つ一つがシンプルではあるが,しっかりと存在感を帯びて鳴らされている。このエレクトロニックな音像はChrisというよりはもう一人の共同制作者であるTwin ShadowのJeorge Luis Jrの影響が大きいのではないだろうか。
しかしあまりにウェルメイドになりすぎるなんてことも当然ない。ファンキーなベースが鳴り響くなかチャントのように同じ言葉を呟きながら盛り上がっていき,サビではヘビィなビートの上で叫び声とノイズが嵐のように飛び交う表題曲などは,それこそソロ版「I Live With You」ともいえる。
言うなればこれは,ブルックリンの鬼才が挑んだ最新型R&Bアルバムだ。Grizzly Bearのポップさですら飽き足らず,自らのルーツを維持しつつティンバランドやディアンジェロに真正面から喧嘩を売る驚くべきアヴァンギャルドポップ。美しさを得る代わりに色気を失う同郷の雄に対し突きつけるクールでセクシュアルなR&B。もしかしたらこのアルバムは,今の芳醇なUSインディにすら足りないものを持っているかもしれない。
(最後にライブのフルセットを。http://www.npr.org/2011/10/30/141797267/cant-in-concert-moogfest-2011 CDよりさらに気迫に満ちた演奏が聴けます)

これからもたまにやっていきます。最近発売したCDだけじゃなくて,時々は過去の名盤とかも取り上げていくつもりです。もちろんアニメについてもガンガンやりますけど。
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