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あくまで個人的な価値観だが,全ての物語のある表現物には「リアリティ」と「ファンタジー」という二つの大きな尺度があると思っている。
「どれくらいその物語に没入できるか」がリアリティで,「その物語がどのくらい読み手の現実から距離があるか」がファンタジーだ。
例えばアンパンマンは完全にファンタジーのみに特化している物語であり,逆にソラニンやノルウェーの森などはかなりの部分をリアリティにおいている物語といえる。基本的に漫画やアニメなどはファンタジーが強めに,映画や一般小説はリアリティが強めになる。
これは相反するものではあるが,どちらの方が物語の批評において価値を持つなどということはない。自分と全く違う物語に心動かされるのも素晴らしい事だし,物語に強い共感を持たせるのもまた素晴らしい事だ。
ただ,年齢によってどちらを重要視するかにはかなり違いがある。
子どもの頃は自分の中の現実というものが無いので,どんなファンタジーでもリアリティでもある程度の没入しかできない。だからアンパンマンを見て全能感を感じる事ができるし,深いリアリティに根ざす物語を見ても大して感動しない。よって基本的にはファンタジーの方を楽しむ。
それが年がたつにつれ,リアリティを楽しむようになってくる。
最初は少年漫画,その後娯楽映画や青年漫画,そして一般小説や高尚といわれる映画などを嗜好するようになる。経験とともに自分の中の現実を構築していく上で,自分から遠い物語には白々しさを,近い物語には強い没入と感動を覚えるようになっていくのだ。
これは当然の流れといえる。

しかし,最近の…特に日本の表現において,あまりにもリアリティが重視されすぎていないか。
これは,いつも俺が思っていることだった。
利権にまみれて,ろくにオリジナリティを持っている話を作り出せない上に映像としても低品質なゴミしか作り出せないドラマは論外として,映画も欧米に比べてあまりに共感と同情の涙を売りにするものが増えすぎている。クソみたいな「等身大」や「リアルな自分」なんてものが蔓延っているくせに,それは社会の勝ち組,いわゆるリア充にとってのリアルに固まりすぎて,そうでない人々にはまったく共感できないシナリオになっている。
音楽にしてもそうだ。ビッチだのDQNだのが会いたい会えないなんて低レベルにも程がある常套句を垂れ流し,そんなものが「リアルな恋愛」とか抜かしてオリコンベスト10を埋め尽くしている。
だからこそ俺は,そんな日本のカルチャーの中で,ファンタジーの力を持っているアニメに輝きを感じるのだ。
アニメは本来ファンタジーなものだ。そこに富野,押井,庵野らアニメ史に残る天才達がリアリティを作り出した。しかしそこでまるで今の単館上映の邦画のようなスノッブさに押し込まれそうになったところで,エロゲ,ラノベ界から吸収した萌えというファンタジーがカウンターとなってまたバランスを取り戻し,今(少なくとも俺にとって)ロックと近いレベルといえるまで多様性と深みを持つ力強いカルチャーへと成長していったのだ。

その最良の結果がアニメ版アイドルマスター,ストライクウィッチーズ,そしてけいおんである。
けいおんから感じるのは,信じがたいほどに眩しいファンタジーの力だ。俺は彼女らを「等身大の女子高生」だなんて決して思えない。あんなJK絶対いないし,共感なんて一切しない。全く現実にありえない正にアニメファンの妄想を超高品質高解像度で具現化したものだ。
だからなんだ?現実にいなければいけない,妄想なんて悲しくてキモい。もうそんなバカバカしいケチは聞き飽きた。なら何故ダイヤモンドの空に浮かぶルーシーは人を涙させるのだ。なぜピート・タウンゼントはThe Kids are all rightと叫ぶのだ?キッズがオールライトだった日なんて一日だって無かったじゃないか!クソみたいなリアルに対抗するためのファンタジー。それはいつだって,映画だって音楽だってどこでだって人を勇気付けてきたのだ。あずにゃんはそこに名を連ねているんだ!
話が無い?プロットが薄い?そんな映画や小説にまみれた旧世代の戯言に何の意味があろうか。もうそんなくだらない価値観に必死に媚を売る必要なんてないのだ。アニメは新たに萌えというファンタジーの価値観を作り出した。それはとてつもなく美しいものだ。作劇としてのエンターテイメントなんていらなくなるほどに美しい。萌える絵と,萌える台詞と,それを完璧に再現する声優の力と,萌える動作と,それを完全に再現する高品質な作画さえあれば他に何がいるって言うんだ!?
しかし決して山田尚子監督ら製作陣はこれがファンタジー,つまり幻想である事を自覚していないなんてことはない。一期4話。二期13話。二期20話。映画。そして全体を貫く学園生活とそれの終焉としての卒業という主題がそれを完全に物語っている。そう,ファンタジーはいつか終わる。ふざけた現実をぶち殺すための力を俺たちに与えて,けいおんという幻想は消えてしまうという事を。
何度見たって泣いてしまう。一期4話で唯は(恐らくそうとは知らずに)タウンゼントがやっていたウィンドミル奏法を,大量の綺麗な花火の前でする。とてつもなく嬉しそうに。そこには憂いも悲しみも無い。ただひたすらに幸せだけを享受してその右腕を振り回す。本気で武道館に行く気なんてあるわけない。ただ青春の夢という幻の美しさに笑っている。そしてすぐに花火は終わる。そうすぐに終わるんだ!
二期13話でも花火を見上げながらあずにゃんはこう呟く。「また私,夢見てるのかな」1期4話と同じ,ピアノだけの簡素で綺麗なBGMとともに。ここにはあまりに楽しい今と,それがいつか終わってしまうという哀しみが同時に表現されている。これほどの深い表現が今の日本カルチャーのどこにあるっていうんだ?!こんな素晴らしい表現を,製作陣はスノッブさのかけらも見せずに表現して,現実に信じがたいほどの経済効果を見せている。こんな奇跡が他にあろうか!
もちろんその楽曲の中でもこの美しさは存在している。OPEDのゲテモノアニソンはHTTの曲ではない。真にけいおんという作品を表している曲は前澤・稲葉コンビが作る曲,「ぴゅあぴゅあはーと」と「ふわふわ時間」だ。
バカバカしいタイトルだ。そこには感動させてやろうとかかっこいい歌詞を書こうといったようなくだらない大人の計算はない。女子高生ですらこんなバカな詞は描かない。ただひたすら,ファンタジーとしてのキャラが書くくだらなくて眩しい歌詞が並んでいる。
決して五人以外の音は入らない。演奏としても難しい部分はほとんど無い。アレンジも簡素で,曲構成も単純だ。ファンタジーを壊す要素は一つもない。まるで古いガレージロックのような,カリフォルニアのローファイポップのような音像で,力強く澪はこう歌う。「Ah ボリューム上げて ほら ときめき探すよ またこの場所で何度でも 会えそうな気がするよ」会えないのだ。いつかは離れ離れになる五人が,必死にこう歌うのだ!そして最後に入るギターソロは何にも代え難いきらめきをもってすぐに終わる…正直映画の最大の欠点はこの曲を入れなかったことだと思っている。
それが儚い幻想であると自覚した上での,辛い現実を忘れさせてくれる力強いくて輝かしいファンタジー。それがけいおんだ。

これほどの素晴らしさを「萌え豚用アニメ」の一言で一蹴するバカはもう知らん。好きにすればいい。ただ最早萌えという価値観は一過性のムーブメントではなく,少なくともゼロ年代アニメを語る上で欠かせない価値観である事は自明である。それを否定するならもうゼロ年代アニメの八割を否定する事だろう…まあ上のようなバカは平気でそういうことするが。
そして先に挙げた他の二つ,アイマスとスト魔女が,なぜけいおんと同列と呼べる作品なのか…はまたいつか書こう。アイマスは放送が終わったら,スト魔女は…劇場版のあと三期やるだろうけど一応劇場版終わったら書こうかな。また今日みたいな長文になるだろう。けいおんは売れたけどスト魔女はそれほどでもないからな…。まあいるかどうか知らないけど全部読んでくれた人はどうもありがとう。キモいだろうが許してくれ。
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無題
いいぞいいぞ!ゼロ年代は萌えの年!

これで腐女子やネナベどもがまた激怒するかと思うと飯うまだよw

いくら腐女子やネナベどもがキモイと叫んだところでますます腐女子への反感が募るだけ!w
反腐女子戦線 2012/12/19(Wed)02:22:23 編集
無題
連続コメキモくてすみません。

俺は劇場版を、卒業するはずだった高3の、休学中に見ました。もちろん、俺はその年度に卒業できなかったんですが。キモいかもしれないけど、一緒に卒業したかった。そのあとの一年は、なんだかふわふわした実感のない一年でした。

管理人さんのけいおん!観があまりにも腑に落ちてしかたがありません。いつか終わる完成された幻想、その終焉は何気なく、美しいものでした。

俺もぴゅあぴゅあはーとが一番好きです。あの駆けるようなコード進行が、彼女らに吹いていた風みたいで。
うさば 2013/12/24(Tue)21:30:45 編集
Re:無題
俺は大学生でしたね。
もうこの子たちが俺たちの青春取り戻してくれたくらいのもんでしたよ。
これ以上シリーズが続いてほしいとは思いませんが、
俺の心に一生残りますね。
間違いなく。
u16   2013/12/24 22:01
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