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言いたいことはなくなった - The Mirraz

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ミイラズとの出会いは数年前のスヌーザーで,「非邦楽の世代」という特集で今でいう日本のロックンロールリヴァイバルバンド…ボゥディーズ,シガヴェッツ,リリーズ&リメインズなど,洋楽の影響を受けた若手バンドを紹介した記事の一つとして見かけたのが始まりだった。
といってもその場ではそれほどピンと来なかったんだが,もう潰れた湘南台のCD屋でVeni Vida VIciousとのスプリットシングル「New Rock E.P」(アマゾンのマケプラでやたら高い値がついてた。失くしたんだよな…)が売っていて,「こんなショボいCD屋にミイラズが!?」と思わず買ってしまったのだ。
そこに入っていた,今でもライブの定番となっている代表曲「僕はスーパーマン」を聞いて俺はミイラズのファンになった。
といってもこの曲,聞いてもらえばわかるが完っ璧にArctic Monkeysの「Braianstorm」のパクリである。
というかまあ今さらミイラズの話をするときに言及するのもバカバカしくなるくらい周知の話だが,ミイラズの0stと呼ばれる「be buried alive」,そして1st「OUI!OUI!OUI!」(あと2ndの曲半分くらい)はもう参照というのも憚られるくらいまんまアクモンおよびKlaxonsその他その頃流行ってた有名洋楽バンドであり,それのせいでかなり長く…というより未だに叩かれてる(試しにグーグルでミイラズと検索してみればいい)。
その批判についてもちろんファンである俺は一応の反論は持っているが,正直自分としてもミイラズの一番の良さは曲だとは思っていない。
じゃあどこかと言われれば,恐らくミイラズのファンの大体がそうである通り詩である。
流行りものから自分のアンチ,レコード会社からそれこそ自分自身に至るまで四方八方に飛ばす批判,無駄に論理的な自己言及,そして結局答えも何も出ないことに対する怒り。ひたすら褒めて傷をなめあって作り笑いする今の邦楽においてそれは衝撃を受けるのに十分だった。
特に初期…1stの歌詞は全て素晴らしい。個人的には,怒る彼女をやたら科学的な弁明でなだめようとして意味がわからなくなってるラブソング「レディース&ジェントルメン」と,上でも書いた「僕はスーパーマン」。
世界への苛立ちを自嘲交じりにがなりたて,しかし結局は「真剣に拝承しないで」と舌をだしてナンセンスな歌詞で逃げる…そう,この無責任さが今のミイラズが失ってしまったものだ。
曲も,確かに有名洋楽バンドのパクリな訳だが,俺としてはこれはガラパゴス化して参照点も何ももうよくわかんなくなってる今の邦楽バンドへのアンチだと考えている。簡単に言えば「んなエモだかグランジだかJPOPだかわかんねえ音楽より洋楽のまんまパクリの方がかっこよくね?」ということだ。現にインタビューでそれに近い発言をしている。
そして2nd,3ndと進むにつれ,音楽的にはもう少しネタ元のセンスが上がったり自分なりに編集をするようになったりで,それなりに耳に耐えるようになっていった。
逆に詩としては,かなり棘のないラブソング…言ってしまえば売れ線の曲が増えるようになった。まあ個人的にはそれほど多いわけではなかったし,何より昔ながらの棘のある歌がしっかりあったので大して気にはしていなかったが,これを嫌がったファンも多かったんじゃないだろうか(ちなみにこの間にメンバーの脱退と加入,バンドのブレイクスルーや青森事件(このブログでも書いた)など色々あったのもまた昔からのファン離れに影響したのでは…いや知らんけど)。
と,やたら前置きが長くなってしまったが,3ndまではそれなりなマイナーチェンジを繰り返しながらも順当に進んでいったミイラズが初めて大胆な方向転換をしたのが今回の4th,「言いたいことはなくなった」である。
どう方向転換したのかと言えば,まず作詞面では,全曲完全に上で言う売れ線のラブソングになった。
しかも今までの売れ線曲のように,それでも一応ミイラズなりに凝った作りになっているわけでもない。一応インタビューでは「普通に見えて実は凝ってる」みたいなこと言ってるが,俺の目には正直ぜーんぶふっつーのラブソングである。まあさすがにJPOPみたいなクソ恥ずかしい詞ではないし言葉選びなどはさすがかなーと思うところもあるが,今までの曲のように作詞カード読んでて楽しめるようなものでは決して無い。
また曲部分も,本当に単純なロックンロール。どうやらそれは狙いらしいが,正直ミイラズにメロの才能はあまり無いので,単調な8ビートが十曲続いて飽きてしまう。
まあ…今までよりさらにメジャー感(笑)は出てると思う。下手したらこれでさらに売れるかもしれない。今までの売れ線曲が好きな人はこのアルバムを好きになるだろうし,それを全否定はもちろんしない。売れ線曲もミイラズの一部だし,別に毛嫌いするほど嫌いじゃない。
ただ…やはり俺の好きなミイラズは怒ってるミイラズだなとは思う。1,2曲はそういう曲を入れてほしかったというのが正直なところだ。
ミイラズの頭脳である畠山は「こんな時代に棘のある曲を作ってもしょうがない。愛のある曲で元気にしたい」というが,CAN~やCheck~でモッシュするファンを見て何も思わないのだろうか。彼らは決してノリがいいから踊ってるだけじゃない。自分たちの心の声を代弁してくれているその歌詞もまた,心を高揚させる一因になっているのは間違いないはずなのに…。
まあ何もこれがラストアルバムになるわけでもない。どうやらこういうモードは今回で終わりで,次はまた違うようなアルバムを作るらしい。それが俺の望むものかどうかはわからんが,人がそんな簡単に丸くなれるはずもないし,今回よりは棘のある曲を作ってくれるだろう。

最後に,いまだ曲になっていない,バンドのブログに挙げられただけの歌詞を貼って終わろう。これを見たとき俺は本当に感動した。「イフタム!ヤー!シムシム!」に劣らない名曲になると信じている。

映画も雑誌も漫画も音楽も
ファッションもお笑いもテレビ番組も
なんでもかんでもニーズに答え過ぎ
まだ見ぬ答えを見つけて探して
提供すんのが作り手の仕事だよ
今ある答えなんてもういらないんだよ
それはもう終わった問題なんだよ
こんな時代なんだ 好きにやろう

天才になんてなれるわけないけど
生き延びるために生きるのはやめようぜ
新しい時代にマニュアルはないぜ
世の中不景気でも心は無関係
夢ならいつでも無料参加だ
どうせ見るならデかい夢見ようぜ
世の中変えるくらいのことしようぜ
明日死んでも構わないくらい今を生きよう

足でもRUNでもチャリでもカブでも
PINOでもバスでも小田急線でも
ロマンスカーでもつばめでものぞみでも
ひかりでもこだまでもカヌーでもフェリーでも
タイタニックでも海賊船でも
ANAでもJALでもスプートニクでも
ノアの方舟でもなんでもいいや

今ここからが新しい世界だ

                                 -New World-

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ゆうき 2015/10/28(Wed)15:45:19 編集
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