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!!!とは?
「パンクでファンクなダンスロックバンド」というイメージが多いと思う。
ディスコを基調としたダンサブルな曲を、だが生バンドによるファンキーさとハードコアという出自によるパンクテイストを混ぜ合わせ唯一無二にして演奏する。
特にニックの叫ぶようなボーカルによく表れたパンク精神は彼らの魅力の中でも大事なものの一つだと考える人は多いのではないだろうか。2000年代前半にDFAなどを中心として巻き起こったダンスロックムーブメントの中でも突出した個性を持ちえ、現在に至るまで第一線で活躍できている理由は間違いなくそのパンクという部分によるものだろう。
2ndの『Lounden Up Now』と3rd『Myth Takes』はその素晴らしさがディスコと奇跡的な融合を果たした作品だ。長尺な曲群やグルーヴ、音の抜き差しの仕方などは明らかにダンスミュージックのそれではあるが、しかし演奏そのものはまさにパンクという他なく、ただの生演奏ディスコというクリシェから遠く離れた価値を持っている。クールなダンスミュージックをホットに演奏する!!!の魅力を形にしたといっていい作品である。
だが次作の『Strange Weather,Isn't It?』で彼らはさらにディスコに接近した。
荒々しいニックのボーカルはそのほとんどが抑制のきいたものとなり、音もジャムで一斉に鳴らし合ったというよりは各々を録ってミキシングの段階で加工したように感じられる曲が増えた。
それはダンスミュージックとしての更なる硬度をもたらし、わかりやすいブレイクなどではない上質なファンキーさを獲得することにはなったが、逆にロックバンドとしての勢いは失われた印象はぬぐえなかった。
もちろんその中でもリフレインが高揚を生み出す"Hammer"や一筋縄ではいかない曲構成の上でバンドの力が存分に発揮された"Wannagain Wannagain"などの光る曲はあったものの、やはり!!!にはダンスミュージックだけではなく"Me and Giuliani Down by the School Yard (A True Story)"や"Must Be the Moon"などに代表されるパンクな曲も書いてほしかったというのが正直な感想だった。
そして届いたのが、今作『THR!!!ER』である(しかしすごいタイトルだ)。
結果からいえば、彼らはさらにディスコを目指したといえるだろう。
驚いてしまうのがニックのボーカルの少なさだ。先行公開された"Slyd"ですら加工された声と女性ボーカルだけで、"Except Death"などはボーカルがないパートが半分以上を占める。曲構成もストイックでミニマルなものが多く、ダンスロックというよりもはやアシッドハウスやNu Discoといったほうがいい曲が数多く収録されている。
しかし、そのダンスミュージックとしての完成度は目を見張るものがある。
ミニマルなファンキーさは今までの!!!にありそうでなかったものであり、そのレベルも前作に比べ格段に向上している。また実は彼らというのは音の配置にはかなりこだわりを持っていて、ボーカルとドラムとベースを真ん中ギターを左右というようなベタな配置はほとんどせず、様々な音が右から左から飛び込んでくるプロダクションが好きなタイプなのだが、それがここまでダンスミュージックに接近することでとても耳を楽しませる効果を生んでいる。ちなみに曲ごとにドラムの音を変える細やかなこだわりはほんとにクラブ系アーティストみたいですごくいい。
また少なくなったボーカルに変わってこのアルバムにロック的な色を添えているのがギターである。
"One Girl / One Boy"や"Cariforniyeah"など、全編にわたってそのグルーヴを支える音をギターが鳴らしている曲というのは意外と今までの!!!にはなかったことである。コンプと空間エフェクトとカッティングをうまく使った音がとても気持ちいい。"Except Death"における長尺ギターソロ?はなかなか聞きごたえがある(この間ライブでニックどうしてんだろとは思うが)。
言ってしまえばロックとダンスどっちつかずだった前作をさらにダンス寄りになることで今までとは違う魅力を持ち得たということだろう。プロデューサーやエンジニア周りが固い音好きなSimian Mobile DiscoのJash Shawだったりさらに変なプロダクションが印象的なSpoonのJim Enoもプロデューサーにしたり、ジャムでなくちゃんと曲を作ってからスタジオに入るようにしたりミニマルテクノを聞き漁ったりと、ロック的な勢いでなくダンス的な渋さをだすために色々したようだ。それはちゃんと音に表れていると思う。
そして何より大事なのが、最終曲"Station (Meet Me At The)"である。
ここでプロダクションは一気にロック寄りになる。ドラムのフィルインからギターとベースを入れるイントロ、8小節を2回の典型的ヴァースからギターがグルーヴを作るサビへ。ニックのボーカルの荒々しさもそれぞれの演奏の仕方も、完全に初期の!!!のそれである。
もちろん彼らにはそのつもりはないかもしれない。だが俺には、過去のダンスロックとは違った大人のダンスグルーヴを手にした!!!が最後の最後で初心のパンク精神を思い出すかのように叫んでいるように見える。
それはとても素晴らしいことだと思う。同じことを繰り返すわけにはいかない。変わっていかなくてはならない。だが、すべてを変えてしまったらそれは自分たちがやる意味がない。
これは!!!の代表作ではないかもしれない。2ndと3rdが好きな人にはおとなしく収まってしまったように見えるだろう。次回はもっとパンクよりでいいとも思う。
だがLCD Soundsystemが解散し、The Raputureがよくわからない方向へ進んでいる今、もはやあの日鳴らしていたものとは全く違う音を、だが決して自分を見失うことなく鳴らしている彼らの姿に頼もしさを感じるのは間違いない。
アルバム一枚一枚ではなくアーティストそのものに魅力を感じ、ディスコグラフィを網羅したくなるアーティストというのはそういう人たちだと俺は思う。信じて7月4日代官山UNITに行こう。こんなスタジオアルバムをライブでどう再現するかとても気になるし。
最後にボーナストラックも名曲なので日本版買うことをお勧めします!
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