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James Blake@新木場スタジオコースト(6/5)に行ってきました。
James Blakeの2ndは一聴した限りでは順当に音楽性を増やしメロも綺麗にした正当進化ないいアルバムだなと思っていたのだが、改めて1stを聞いたときにその早川義夫的情念がぶちかまされた歌詞とその情念を180%伝えようとするアヴァンギャルドかつ力に満ちた音像の素晴らしさに今更ながら圧倒され、やっぱ1stには劣るなーと感じるようになってしまった。
今回の来日もやはり2ndが主体になるわけで、実際にライブの感想も「完成度が~」「美しい~」「正当な進化~」という俺がさっき書いたような2ndの評価そのままのようなものが並んでおり、そりゃそうかと思いつつもポップスに舵を切った彼にライブへ行くほどの興味はなくなっていた。
が、昼休みにふと2ndを聞き、2ndで唯一ピアノ主体のバラードになる"DLM"の美しさに感動し、愛聴している1stの曲もやるわけだしなぜか当日券もあるようだし職場から新木場まで10分だし行くかーと軽いノリで東京最終日に新木場に向かった。
そして一曲目"Air & Lack Thereof"でまずぶっ飛ばされた。
ご存じのとおりこれは初期EP群の一曲で、James Blakeがまだクラブアーティストだったころの名曲の一つである。現在の曲より圧倒的にむちゃくちゃな音像とそれでもどこか哀愁と美しさが漂うメロディのバランスは今にはない魅力だが、それを会場の爆音で聞かされるとここまで感情が溢れるのかと驚いた。
それがさらに顕著になったのが次の"I Never Learnt To Share"である。
声をルーパーで重ね合わせ、だんだんと盛り上げてサビで爆発させる彼の代表曲。
といいつつ1stのプロダクションはあくまでクラブミュージック、ベッドルームミュージックとしての側面を反映させ、勢いよりはバランスを大事にした音に仕上げているせいか、サビのテンションが微妙であまり好きになれなかった。
だが、ライブでのこの曲は全くその姿が違った。まさに「爆音」というにふさわしい破壊力のあるJames Blakeのキーボードが勢い…というにはあまりに激烈な(なんかバカみたいな表現しまくって申し訳ない)感情を表現しており、それはもはやMogwaiやGY!BEのような殺意すら感じさせた。しかもそれでも全体のPAは完璧だというから恐ろしい。
当然だがアレンジはほとんどなく、曲そのものは原曲の歌詞を含めた完全なベッドルームミュージックだというのに、音像だけでここまでの感情を表すという感覚は衝撃を受けるに十二分だった。そしてその感覚はJames Blakeのアーティスト性である強い感情を押し殺し、そこに音を含めて伝えようとするものと合致していたとも思う(早川義夫のバックバンドを不失者がやったらこんな感じになるのかなーとか訳のわからないことを思ってしまった)。
とまあ絶賛しまくりの冒頭2曲だが、その後の五曲は眠くなってしまった。
まあ要するに2ndのバラードが続いたのだが、ライブの最初にバラード、しかもその曲の出来が個人的につまらなかったので、欠伸をかみ殺すほど楽しめなかった。ライブとしてのアレンジも特になかったし。"Lindisfarne"は原曲が好きだったので嬉しかったが、この流れでやってほしくはなかったというのが正直なところだ
そこで最初の「ポップスに寄った」的な不安が頭をもたげたのも事実だ。1stやEPの曲は素晴らしいが2ndの曲はこういった大人しめアレンジなのかなーと当日券7000円を後悔しだしたその時。
"Digital Lion"が始まった。
そこからがまさに今回のJames Blakeのライブの本領だった。
2ndの曲には大体3種類あると思う。"I am Sold"のようなバラード、"Retorograde"のような派手なポップス、そして"Digital Lion"のような暗いリズムトラック。
中盤はそのリズムトラックを畳みかける構成になっているのだが、そのライブアレンジが恐怖すら感じる程の重さなのだ。
ほかの曲のようにJames Blakeが歌い上げるようなことはほぼ無い。その代わりにたった一言の歌声をループさせ、それに合わせどれも長尺になるアレンジが加わっており、今回のライブメンバーの三人がまるで火花を散らすようにそれぞれの音を鳴らしていく。
特に白眉なのがギターを務めるAirheadだろう。原曲ではほとんど目立たないギターサウンドが、ライブだとまるでギタードローンのような爆音で迫ってくる。肩を丸めうつむきキーボードを弾くJames Blakeとゆったりとリズムを叩くドラムとは反対に、まるでシューゲイザーバンドのようにギターをかきむしるその姿はとても印象的だった。
"Limit To Your Love"も原曲はあまりに暗すぎて好きではなく、また以前手に入れたライブアルバムでのアレンジも片手間でダブをやっているような感じでつまらないとしか思えなかったのだが、今回はそれで言えば本意気でダブをやったというか(いや以前も本気だろうけどw)、さっき言ったような怖さがダブアレンジというまた違う形で現れた素晴らしい熱演だった。
そう、怖さである。
James Blakeがなぜここまで日本でバカ売れしたか?
明らかにその泣きメロ感のおかげだろう。悲しさを綺麗なメロで歌い上げる。もちろん彼の豊潤な音楽性もヒットの一因だろうが、それでもこれほどバカ売れした理由はそこが日本人の音楽的嗜好にあったからだと思う。そしてそれは当然素晴らしいことだ。俺だってそこに感動して彼を好きになった。
だが、今回のライブの中盤で彼が表現したのは、その裏に潜む闇のようなものだと思う。
寂しさや悲しさの後ろにある怒り、恐怖、殺意。
それをノイズでもなく激しいバンドサウンドでもなく、ダブステップを背景にしたアヴァンギャルドなリズムと最低限のメロを表現するだけの抽象的な上物、ドローンのようなギター、そして何よりJames Blakeのあの強く弱い歌声で表現するその二面性が今回のライブにはあった。
"Klavierwerke"の演奏は一生忘れないだろう。ハイハットだけのブレイクの後。サンプラーから叩き出された何とも言えないノイズを合図に、暗闇でストロボのように明滅するだけの照明の中地獄のように恐ろしい重低音の上でKevin Shieldsのようなギターと神経質なキーボードがけたたましく鳴り響き、そこにまるで何かを訴えるように声にならない声を歌うJames Blake。そのあとの"Ovaergrown"が何かのギャグにしか思えなくなるほどの吐き気がする重苦しさ。
俺は二階で見ていたが、あれだけのリズムの中踊っているものは一人としていなかった。手も上げる者もおらず、俺の後ろにいて曲中に勝手に一緒に歌ったりバカみたいにキャーキャー叫んでるアホ女も、その時だけは黙りこくって見守っていた。そんな中俺は一人背広で眼鏡をはずして踊り狂った。あれで踊らずして何に踊ろう?
本編最後の"Retorograde"はキーボードの爆音と歌い上げるメロが美しく、アンコールの"The Wilhelm Scream"も最初に書いたような1st曲のライブならではの側面が見られた。通勤途中で何十回と聞いた"A Case of You"も生で見れて嬉しかった。
だが、それに涙を流すことができなかったほど、James Blakeというひたすらに肩を丸め、所在なさげに佇む柔和な青年(俺と同い年というから驚きである)の奥に垣間見た信じがたいほどの闇は恐ろしかった。
次のアルバムはぜひそれを表現してほしいと思う。
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