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他のポップスと比べたアニソンの特長とはなんだろうか?
諸説あるだろうが、俺としてはそのイマジネーションだと思う。
雑食性とも言おうか。アニメというリアリティに囚われないコンテンツに合わせるため、ロック、ポップス、テクノ、ヒップホップ、ジャズやファンクなど世界中のあらゆる大衆音楽を組み合わせ、かつ音楽的素養の無いものにもリーチするようなポップさを維持する業はまさに職人芸と言ってよく、それはありきたりなフォーマットに沿ったイージーリスニングや流行の音楽に日本人ウケするメロを乗せただけのオリコン曲にはない魅力だ。
しかし最近、MONACAやエレメンタルガーデンなどのアニソン制作集団や、クラムボンのミトなどの他業界アーティストによる良質なアニソンがじわじわとアニメ業界に浸透し始めるに従い、その特長が少しづつ薄まってきているような印象がある。
確かにそれらの曲は良質であり、参照点にもその参照方法にもセンスを感じさせ、また猿真似に終わらないテクニカルなアニソン変換には聴き応えがあるのは間違いない。
しかしそのハイセンスさが逆に先述したイマジネーションを減衰させているような気がしてならないのだ。
その最たるものが花澤香菜だ。
北川勝利、ミト、カジヒデキ、沖井礼二、スタジオアパートメント、やくしまるえつこ…確かにセンスのいい人選である。
だがしかし、そこに「センスの良さ」以外の何かがあるだろうか。
ヴィレッジヴァンガードに通うような、ナタリーに毎日アクセスするような、「音楽オタクが知るいい音楽」以外の何か、花澤香菜だからこそ表現できる何かが存在しているだろうか?
彼女が歌う歌たちをアニソンと呼ぶ必然性があるだろうか?
彼女のCDが並ぶべき場所はラウンジ系ポップスの棚なのではないか?
もちろん音楽においてクオリティは重要な要素である。
この島国のある1クラスタでしか通用しない低レベルな音楽をオリジナリティと主張する愚を犯すつもりはない。
しかし、もし例えそれが声優アーティストだったとしても、その音楽を表現と捉えるのであれば、そこにオリジナリティが、イマジネーションが、何かそこにしかない個性があって然るべきだろう。

まずこのアルバムの人脈を整理しよう。
作詞は全て藤林聖子が担当している。それによりアルバムの歌詞全体に通底するファンタジーを与え、強力な世界観を構築することに成功している。もちろん詞としてのクオリティもベテランならではの安定したものである。
そして作曲は主に3人。同人音楽出身であり『プティパ』のリード曲"回転木馬としっぽのうた"、シングル"ビジュメニア"など非常に独特な曲で悠木碧のアーティストとしてのイメージを確立したと言っていいお馴染みのアーティストbermei.inazawa氏、同じくシングル"クピトゥレビュー"の作編曲を担当していたダブ系出身のzakbee氏、そしてtofubeatsがお気に入りに挙げたというエレクトロニカ系アーティストである辻林美穂氏。
これは声優アーティストのアルバム、それもアーティスト側にプロデューサーがいない場合としてはかなり少ないほうだと言っていい。また作曲側に有名なアーティストが一人もいないというのもアケースと言える。
ネームバリューや音楽性の幅より、それぞれの個性を活かししっかりとまとまった作品を作るための少数精鋭というところだろう。
そして曲だが、まずその作品トータルとしての完成度に驚く。
その曲順からしてかなり考えぬかれている。
ゆったりとしたバラードの"SWEET HOME"から強烈な個性が耳を引く"アールデコラージュ ラミラージュ"、その後系統の似た既発曲二曲のあと音数の少ないバラードと個性あふれる佳曲のポップスを交互に展開し、その後ジャジーな曲を三連発。最もわかりやすく盛り上がれるであろう"クピトゥレビュー"を最後の方に持ってくる心配りが憎い。
また、手癖やノリで書いたような曲が一つとして無い。
シングル曲以外も全てアレンジや展開が一癖も二癖もあり、気を抜いて聞いていられない。そこにある意味があり、またその役割をしっかりと全うした粒揃いの楽曲が並ぶ。
bermei.inazawa氏はいつも通りの個性的な展開で気を引かせ、辻林美穂氏は落ち着いているが一音一音にセンスが込められたアレンジでじっくりと聞かせる。そしてzakbee氏はテンションの高いジャズでクライマックスを作り出す。
特に美しいメロディが静謐なエレクトロニカとしてのアレンジのうえで輝く"ロッキングチェアー揺られて"、楽しくグルーヴィーなビバップに乘せてどこか物悲しく歌われる"Angelique Sky"は、非シングル曲とは思えないほどのハイクオリティである。
これほどまでにクオリティとオリジナリティ、そして完成度の高いアルバムは邦楽全体を通してもなかなか見当たらない。
そのせいで音楽性の幅は少ないし、いわゆるアニソンとしてのポップさはあまりない。参照点もわかりにくいし、皆で盛り上がるツールとしての機能性は低いだろう。
だがそうではない、単純にアーティストとして見た悠木碧の表現物という観点から見て、これほど素晴らしい作品はないとすら言える。
今までの彼女の作品でも他に比べればその主張、表現、個性は強いと言えたが、それでもミニアルバムではやはり現在の流行に載せた世界観の違う楽曲が少なからずあった。
だがこの作品、『イシュメル』は違う。
彼女の奥底にあるイマジネーションと美学に満ちた寓話的、演劇的世界観。曲のために絵を書き下ろす彼女の、溢れんばかりの想像力を120%受け取った音楽たちだけで作り上げられている。
それはそう、ある人々からすれば「痛さ」と言い表されてしまうほどの若々しく強い個性は、音楽アーティスト活動の結晶としてのフルアルバムというそれが存分に発揮されるべき表現媒体において、今までの何よりも光り輝いて顕される。
もしこの作品からその代表となる曲を選ぶなら、迷わずリード曲である"アールデコラージュ ラミラージュ"だ。
ストリングスやキーボード、女性コーラスなどがめまぐるしく展開して表現される大仰な演劇の劇伴のようなbermei.inazawa氏の特長は引き継ぎながらもそのリズムはあまりに強く、そして6拍子から5拍子へと変わるサビでは追い切れないほどの数の音が音域全体を覆い尽くして、減った1拍子分切迫したリズムによって迫り来る力強さの上で悠木碧は高らかに散文詩的な言葉を歌い上げる。
決してオリジナリティに耽溺しないポップさを持ちながらそれはあくまで聞き手への迎合でなく作り手の美学であり、しかしその根底で波打つ想像力がどうしようもない奇妙さを生み出して聴く者をどこでもないどこへ連れていく。
これこそが俺の望む「アニソン」の境地である。

惜しむらくは基本的に打ち込みであり、プレイアビリティがあまりにも希薄なことだろうか。
現実的な予算や手間の観点からも、彼女の言葉の端々からも、ライブではオケを流すだけであろうことは想像に難くない。
もちろんそれは全てを生音で録るにはあまりに壮大過ぎるイマジネーションの表現だったということの裏付けでもあるが。
しかし逆に言えば音楽面で使うはずだったリソースを全て視覚面に割けるということでもあり、「『イシュメル』の世界観を戯曲的に表現する」という発言からも、その舞台演出は相当に凝ったものであろうと思われる。
そういえば彼女は基本的にアーティストとして歌うときは「うまく歌うことではなく、演じるように歌う」ことを心がけているらしい。
確かに単純な歌唱力という面ではさほど得手というわけではなく、また逆に演技力に関しては若手でもトップクラスである彼女にとってはその方がやりやすいだろうし、実際そのことによって歌唱面でもこの作品の世界観を表す一助となっている。
そしてその表現方法がもっと強く発揮されるのがライブであろう。
音楽面ではないトータルの表現物としての完成形を、ぜひそのライブで目撃したい。
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